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肝機能としじみの関係

1.しじみの栄養素が肝臓をサポート

私たちの体にある重要な臓器である肝臓。
C型肝炎や肝硬変など、テレビの報道番組やバラエティーなどで肝臓の重要性が説かれています。
しかし、肝臓がどのような役割を果たす臓器なのか、実際のところよく分からない方の方が多いのではないでしょうか。
しじみは、肝臓で作用する栄養素が豊富で、様々な方面から肝臓の機能をサポートしています。
今回は、肝機能としじみの栄養素の関係について、詳しくお話します。

2.肝臓とはどんな臓器?

肝臓は腹部の右上にあり、右肋骨の内側に収まっている臓器です。
成人で約1,200~1,500gの重量があり、人体でもっとも大きな臓器です。
肝臓は体内で化学反応の触媒となる、たんぱく質でできた様々な酵素を生産します。
酵素は基本的に、1種類で1つの化学反応に対応します。
肝臓で生産される酵素の種類は、実に2,000種類にものぼります。

肝臓はこれらの酵素を用い、主に以下の3つの役割を担います。

  • (1)物質の代謝
  • (2)有害物質の解毒
  • (3)胆汁の生成

それ以外にも、500以上もの役割があるとされています。
その役割の多さゆえに、「人体の化学工場」とも呼ばれています。

3.しじみと肝臓の関係は?

しじみは、肝臓の機能と関係する栄養素が非常に豊富です。
肝臓のどんな機能にしじみの栄養素が関係するのか、詳しく見てみましょう。

3-1.しじみのビタミンB群と代謝

肝臓は三大栄養素の糖質、脂質、たんぱく質を代謝し、様々な物質を生産します。
代謝とは、Aという物質とBという物質を、化学反応で別の性質の物質に変えることを言います。
例えば、三大栄養素の糖質や脂質は、肝臓で代謝しエネルギーに変換されます。
一方で、エネルギーにならなかった余った糖質や脂質は、代謝して脂肪に変換され、体内に蓄積されます。
消化器官で消化されたたんぱく質はアミノ酸に分解され、肝臓に運ばれます。
肝臓はこれらのアミノ酸を代謝し、別の機能を持つたんぱく質やアミノ酸を生産します

肝臓で行われる三大栄養素の代謝には、ビタミンB群が必要不可欠です。
そして、しじみはビタミンB群が非常に豊富な食品です。
ビタミンB群は糖質、脂質、たんぱく質の代謝に、補酵素として作用します。
しじみが含有するビタミンB群の中で、ビタミンB2は脂質の代謝で作用します。
ナイアシン、ビタミンB6、パントテン酸は糖質、脂質、たんぱく質の三大栄養素の代謝で作用します。
これらのビタミンB群が肝臓の代謝機能をサポートし、肝機能を正常に保ちます

3-2.しじみのオルニチンと肝臓の解毒作用

肝臓は体内に侵入した様々は有害物質を無毒な物質に代謝したり、体外に排泄したりする役割があります。
肝臓の解毒作用の重要な役割の1つとして、アンモニアの無毒化があります。
アンモニアは食物の消化や体内でのエネルギーの生産の過程で、たんぱく質やアミノ酸が代謝されると発生します。
アンモニアはもっとも単純な窒素化合物で、水や油によく溶け、細胞を守る細胞壁をいとも簡単に通過してしまいます。
アンモニアが細胞に入ると、細胞内でエネルギーを生産するミトコンドリアの活動を阻害します。
また、神経細胞や脳細胞を麻痺させるため、意識障害や記憶障害を引き起こします。

体内に発生したアンモニアは、血液で肝臓に集められます。
そして肝臓の細胞内の尿素回路と呼ばれるシステムで、アンモニアは無毒な尿素に代謝されます。
この尿素回路に必要不可欠な物質が、しじみが豊富に含有するオルニチンです。
肝臓でオルニチンが不足すると、尿素回路の代謝能力が低下し、肝臓に有害なアンモニアが充満します。
肝臓にアンモニアが充満すると、肝臓にエネルギーを供給する肝細胞のミトコンドリアの活動を阻害します。
その結果、肝臓の他の機能も低下し、疲労や体調不良を引き起こします。

弱った肝臓にしじみで直接オルニチンを摂取すると、尿素回路が活性化し、アンモニアの処理能力が向上します。
肝機能を阻害するアンモニアの量が減ると、再び肝臓が活性化し、肝臓の他の機能も回復します。
その結果、疲労や体調も回復します。
しじみのようにオルニチンを豊富に含有する食品は数が少ないので、肝臓のアンモニアの無毒化にしじみはとても有効です。

3-3.しじみの亜鉛と肝臓の働き

肝臓は有毒物質の解毒を行うため、肝臓の細胞は常に毒物にさらされ、毒に侵された細胞は死んでしまいます。
そのため、肝臓は細胞の新陳代謝※1が非常に活発で、細胞分裂を盛んに行うため、再生力がとても高い臓器です。
仮に2/3を切除したとしても、数か月で元に戻ることができます。
※1 新陳代謝とは死んだ細胞を分解し、新しい細胞を生産すること。

この肝臓の細胞の新陳代謝に必要な栄養素が、しじみに豊富な必須ミネラルの亜鉛です。
亜鉛は細胞分裂に必要不可欠な成分で、遺伝子情報の転写やたんぱく質の構成に使われます。
そのため、肝臓で生産される酵素にも、亜鉛が関与しています。
しじみは亜鉛を可食部100gあたり2.1gも含有し、これは成人1人が1日に必要な摂取基準の30%に相当する含有量です。

3-4.しじみのビタミンEと肝臓のコレステロール分泌

肝臓はLDLコレステロールの生産を行います。
LDLコレステロールは、一般には悪玉コレステロールとして知られている脂質です。
しかし、LDLコレステロールは細胞膜を構成する重要な成分で、不足すると細胞壁が弱まり、細胞内へウィルスが侵入しやすくなります。
肝臓で生産されたLDLコレステロールは、血液を通じ体の必要な器官に送られます。

しかし、LDLコレステロールが肝臓で過剰に生産されると、動脈の血管に付着し血栓を作ってしまいます。
動脈に付着したLDLコレステロールは、細胞でミトコンドリアがエネルギーを生産した際に発生する活性酸素※2によって酸化し、分解が困難な過酸化脂質に変質します。
過酸化脂質になると、自身も活性酸素を発生するようになり、周囲の血管に炎症を起こします。
炎症を起こした血管は線維化して固くなり、結果として動脈硬化を引き起こします。

※2 活性酸素は電子の少ない酸素のこと。電子が少ないと物質として不安定で、他の物質と結合して安定化を図るため、化学反応が通常の酸素より早くなります。

しじみは、油に溶けやすい脂溶性の抗酸化物質のビタミンEが豊富な食品です。
ビタミンEは体内に吸収されると、肝臓で生産されるLDLコレステロールに侵入し、その酸化を防ぎます。
また、ビタミンEを摂取すると、肝臓での脂肪の蓄積を予防し、肝臓のLDLコレステロールの分泌も抑制します。
ビタミンンEは、通常脂質も多い食品に豊富ですが、しじみは脂質が少ないにもかかわらず可食部100gあたり1.6mg含有し、これは成人が1日に必要な摂取基準の20%に相当します。

3-5.しじみの鉄は肝臓で貯蔵

血液で酸素を運ぶ赤血球の主成分であるヘモグロビンの構成物質が、必須ミネラルの鉄です。
体内には成人の男性で3~3.5g、女性で2~2.5gの鉄が存在します。
体内の鉄は、ヘモグロビンとして60%が使用され、残りの40%は肝臓と脾臓で貯蔵されます。
鉄は毎日1mgほど、尿や糞便、汗とともに体外に排泄されます。
一方、鉄は非常に吸収が悪い栄養素で、食事で摂取しても全体の15%とほどしか体内に吸収されません。
鉄は不足すると、肝臓や脾臓で貯蔵された鉄が使用されます。
計算上、鉄肝臓や脾臓に貯蔵される鉄の量は3年分ほどあるとはいえ、食事で鉄が不足すると徐々に肝臓や脾臓で貯蔵していた鉄が減ってゆき、慢性的な貧血を引き起こします。

しじみは鉄が非常に豊富な食品で、可食部100gあたり5.3mgも含有し、これは成人男子が1日に必要な摂取基準の70%に相当する含有量です。
しかもしじみの鉄は、体内への吸収がよいヘム鉄です。
しじみで鉄を摂ると、胃酸でイオン化され小腸で吸収されて、肝臓に貯蔵されます。
結果として、貧血を予防することができます。

4.まとめ

肝臓は1つの臓器で500以上もの役割がある、人体で大変重要な臓器です。
しじみは肝臓の働きをサポートする栄養素が豊富です。
肝臓の代謝機能にはしじみのビタミンB群が補酵素として作用し、アンモニアの解毒にはオルニチンが重要な役割を果たします。
また、LDLコレステロールの分泌はしじみのビタミンEが深く関与し、しじみに豊富な鉄は肝臓で貯蔵されます。
さらに、肝細胞の新陳代謝には、しじみに豊富な亜鉛が必要不可欠です。
しじみを習慣づけることで、体を正常に保つ肝臓の機能を維持できます。

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